1 木取り
奥深い原生林から切り出された原木は節、割れ、キズ等をさけ最も良い材料が取れる様に慎重に鋸が入れられます。木目の取り方で価値が大きく変わるのでその見極めが大切である。
盤を選ぶポイントの「木目」と「艶」は、木取りで決まると言っても良いほど非常に熟練を要する作業。
「最初の木取りの段階が、実は職人の腕の見せ所です。」と言う。
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2 乾燥
木取りされた盤材は、乾燥途中におけるひび割れを防ぐため、割れ止め加工が施され5年以上の自然乾燥による長い眠りにつく。
一般的には1寸(3.03cm)の厚さについて1年以上の自然乾燥が必要と言われている、乾燥が十分でない盤は、後になってひずみやひび割れが出てしまう、地味で年月のかかる作業だが、決しておろそかに出来ない重要な過程である。 |
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3 削り
乾燥を終えた盤材は、ようやく盤作りに入る、最初は機械を使って表面のゴミや節、虫食い穴などを荒く削り取る。埃で汚れていた材が本来の色を取り戻す。
荒削りの後は、数種類の手鉋を使って、丁寧に削る。一鉋かける度に木目の表情が変わるので、どこでやめるのか判断が難しいそうです。
蝋摺り
削り終えた盤の木の表面に溶かした膠を塗りその上に白蝋を塗る作業。
ツヤを出すためと、乾燥を終えた木の呼吸を止めることが一番の目的である。
湿度の高い日本では、木の目を塞いで呼吸を止めないと、水分が再び木の中に入り、ひび割れやシミの原因となる。 |
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4 ヘソ掘り
ヘソは、盤の底面にある四角く掘った窪み、血溜りとも言われているが、本来は、碁盤の割れや、ひずみの防止と響きを良くするためのもの。
(血溜りは、助言者の首を切って乗せておくためと言われていた)
木の中心部に溜まった水分を外に逃がす割れ防止のための工夫、いわゆる「背割り」の役目を果たす。
乾燥が終わって、削り・鉋かけされた盤は、ニカワ塗り・蝋摺り・へそ堀と様々な知恵と工夫が盛り込まれ、盤の耐久性と素材の持つ美しさを保っている。 |
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5 太刀盛り
碁盤製作の上で最も神経を使う工程で、盤面に升目入れる作業。
この作業は、盤師によって様々だが、ここでは「太刀盛り」という伝統的な手法により升目を入れていく。
文字通り、下書きに沿って日本刀を使い漆を盛っていく。一本一本信じられないほど正確に、美しい漆の線が盛られて行く。
日頃穏和な熊須さんの表情もこのときばかりは、真剣なまなざしとなる。
もし失敗したときは天面の削り直しとなるため、最も神経を使う作業である。
この作業が終えると天面にも蝋摺りが行われる。 |
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6 脚作り
脚は、盤を支える大切な部分、ノミと小刀で、1個1個丹念に仕上げられる。
脚の形は、クチナシの実をかたどったもの、第三者の助言を許さない「口無し」の意味が込められている。
碁盤の中で、隠れた芸術品と言われる脚材、初めはノミで大まかに形作られ、小刀により微妙なカーブが手際よく削られていく、熟練者の技には寸部の狂いもない。(右の写真)
「目立たないが、脚作りは非常に技術が必要な部分、脚がしっかり作ってあるものは、それだけ手をかけて丁寧に作っているということ、そういう碁盤を選んで大切に使って頂きたい」と言う。 |
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7 脚植え
脚はそれぞれの盤にあった色合いや木目、盤の厚味に合わせた大きさなど、選び抜かれたものが植えられて完成となる。
脚と盤のバランスが非常に難しいのだという。
このようにして出来た碁盤・将棋盤は、使い込むうちに渋みのあるアメ色をおび重厚な風格ある物になっていく。
榧は、その優れた弾力性により、打ち下ろされる碁石や駒の衝撃を吸収してくれるため、「一日中対局しても疲れることがない。」というプロ棋士の話は有名。 |
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8 完成 完成した作品は熊須碁盤店でご覧ください。→ |
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