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綾の照葉樹林・照葉大吊橋・千尋公園

綾の照葉樹林を世界遺産に

照葉大吊り橋 綾の照葉樹林は、大森岳(1108m)の南東稜とその周辺に広がる常緑広葉樹の森です。(右の写真:照葉樹林文化館より照葉大吊橋を望む)
大森岳は九州中央山地国定公園の最南峰にあり、照葉樹の森は約2,000haに及びます。この広さは日本最大級であり、多様な生態系により構成されています。
 照葉樹林はヒマラヤ南麓から、東南アジア北部、中国雲南省、長江下流域を経て、国内では九州南部から北は岩手県、秋田県にまで達しています。現在では農地への転換、開発による伐採により、照葉樹林の面積は減少しており、綾のように面積が大きくまとまった照葉樹林は他にありません。
 また綾の照葉樹林は、大森岳の北に位置する尾鈴山、掃部岳の植生と異なっており、掃部岳周辺は落葉広葉樹(ブナ林)が生育する最南端にあたり、一方の大森岳周辺は常緑広葉樹が生育する北端となります。ここ綾の地が常緑から落葉へと変わる最前線ということからも、綾の照葉樹林の貴重さがわかります。
 太古には日本の照葉樹林は約12から15万km2(日本の総面積の30から40%)あったと推定されています。しかし現在では3000km2あまりしかなく、日本の森林面積のおよそ1.2%に過ぎません。宮崎県には日本における照葉樹林総面積の約47%(1400km2)があると考えられており、九州本土に現存する8割を占めています。
 これだけ稀少性のある照葉樹林を、綾では原生的なまま、まとまって見ることが出来ます。今後綾の照葉樹林を世界的な宝として、保護していく必要性を感じます。   綾の照葉樹林を世界遺産に

綾の照葉樹林高木構成樹種

 綾の森には848種の植物が確認されています。そのうち照葉樹林構成種は263種確認されています。高木種だけを見れば、日本に自生する照葉樹林構成種は25種ですが、綾にはそのうち24種が生育しています。これは綾の照葉樹林以外では見られない特徴であり、広い地域でさまざまな生物が行き来しながら構成された、多様性に富んだ森であることがわかります。

<ブナ科>
コジイ スダジイ マテバシイ シリブカガシ
アカガシ イチイガシ アラカシ ハナガガシ
シラカシ ウラジロガシ ツクバネガシ
<クスノキ科>
クスノキ ヤブニッケイ カゴノキ 
ホソバタブ タブノキ
<イスノキ科>
イスノキ
<ホルトノキ科>
ホルトノキ
<ヤマモモ科>
ヤマモモ
<モチノキ科>
モチノキ クロガネモチ
<バラ科>
バクチノキ
<モクセイ科>
シマモクセイ
<モクレン科>
オガタマノキ

生息している主な哺乳動物

 綾の照葉樹林内で確認されている哺乳動物は、13科19種です。宮崎県内で確認されている哺乳類が14科36種であり、綾にはその内約50%が生息しています。

ニホンザル ノウサギ ムササビ タヌキ テン
イタチ アナグマ イノシシ ニホンジカ ニホンカモシカ 他

生息している主な野鳥

 綾の照葉樹林内で確認されている野鳥は、30科70種です。留鳥37種、夏鳥13種、冬鳥18種、旅鳥2種。
 ここにはたくさんの鳥類が生息しています。これだけ多くの鳥類が生息できるのは、照葉樹林がもたらす豊かな植物相により、昆虫や小動物が多く生息しているからです。
 また綾では照葉樹林の生態系において食物連鎖の最上位捕食者に位置するクマタカが確認されており、最上位捕食者が生息するということからも、照葉樹林の生態系の豊かさを指し示しています。

クマタカ オオタカ フクロウ イヌワシ 他


照葉大吊橋

 九州中央山地国定公園綾地区の中央にある照葉大吊橋(てるはおおつりはし:綾の照葉大吊橋・綾の大吊橋等とも呼ばれている)は、昔から千尋公園(せんぴろこうえん)と呼ばれ、山桜の群落で有名です。
 世界一と言われる大吊橋が綾南川を跨いで架かっています。ここは照葉樹(常緑広葉樹)の森に囲まれ、自然の景観と森林浴など、心をリフレッシュできる場所です。


 九州中央山地国定公園綾地区は、綾南川と綾北川の二つの川に挟まれた2500haの面積を有する照葉樹林で、昭和57年国定公園に指定されました。ここにはクス・タブ・イチイカシ・スダジイ・イス・椿等の樫や椎の仲間で形成する照葉樹の生い茂る自然林です。
 自然林ですから照葉樹の他、碁盤の材料として有名な榧やイヌマキ等の常緑針葉樹や山桜などの落葉樹も混ざり豊かな植生を形成しています。

九州中央山地国定公園地図(綾地区) 照葉大吊橋に隣接して、照葉樹林文化館があり、照葉樹林を形成する樹木の種類や照葉樹林に住む動物・野鳥などの自然形態を学ぶことができます。

 九州中央山地国定公園(綾地区)は、右の地図のような位置に当たります。(現地の看板より引用)



 照葉大吊橋(綾大吊り橋)は、長さ250m・高さ142m・幅1.2mの照葉大吊橋と、上流側に長さ75m・高さ22m・幅1.2mのかじか吊橋の二つの吊り橋があります。両橋とも鋼鉄のワイヤで出来た吊り橋です。
 両吊り橋は、綾南川の両岸に広がる素晴らしい照葉樹林を眺めながら歩いて渡ることができます。渓谷を渡ると照葉樹林の間に出来た遊歩道へと続いています。照葉大吊橋の上から下を眺めると、綾南川の流れが小さく見えます。142mの高さは、真上に立つと足がすくんでしまう程です。
照葉大吊橋の途中にガラリが設けられ、足下から下の綾北川を見下ろすことが出来ます。ジェットコースター以上のスリルです。
かじか橋
左の写真はかじか橋から見た照葉大吊橋、谷の深さがよく判ります。

大吊り橋から綾北川下流側の眺望、照葉樹林が広がり、真下を見ると足がすくみます。

千尋(せんぴろ)公園(九州中央山地国定公園綾地区)の植物と見頃

山桜とイワツツジ(春3月)

 千尋公園は古くから山桜の群落(山桜の名所)として有名な場所、3月上旬から下旬にかけ自然の山桜の群落を見ることが出来ます。山桜の群落は、綾吊り橋から少し宮崎寄りの照葉樹林帯が最も綺麗です。吊り橋の上からまた車を止めてゆっくりと眺めてください、自然が作り出す景観は壮大ですばらしいものです。双眼鏡などを持っていくと山桜の群落を間近に見ることが出来、自然の織りなす景観をより楽しめます。(2004年3月26日撮影)

イワツツジの拡大写真 山桜よりやや早い時期、綾町の町花に指定されているイワツツジが常緑樹の育たない岩場の斜面や遊歩道沿いの岩場に咲いて、散策をより楽しませてくれます。

 薄紫色をした花の直径2cmから3cm可憐なイワツツジの開花時期は、山桜よりやや早く、3月上旬から花が開き始め中旬頃まで咲いています。イワツツジが最も群生している場所は遊歩道沿いの斜面に数カ所あります。(下の右の写真:2006.3.4撮影)
 注意:北海道・本州以北に咲く高山植物の躑躅(つつじ)科スキノ属イワツツジとは別物


県道26号線から見た千尋公園の山桜群落 山桜の群落は近くで見るとこのような光景になります 遊歩道沿いに咲く淡い紫色のイワツツジ 岩場から谷に突き出して咲くイワツツジ

宮崎県内「山桜の名所」
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 自然休養村好隣梅はこちら

照葉樹林の散策

 照葉大吊橋からかじか橋の間は、およそ2kmの遊歩道で結ばれ、約1時間の照葉樹林の森林浴を楽しむことが出来ます。遊歩道には山神様上り口・小さな滝や森林浴のベンチ・木の名前・高さ等を解説した案内板等が整備されています。
 木漏れ日が差す遊歩道を歩くと、メジロ・ウグイス・ホトトギスなどの野鳥の声や時々ヒューと鳴く鹿の声が聞こえ、綾南川の瀬音を聞きながら、そして季節毎に咲く山桜・イワツツジなどと草花を眼にしての自然散策は心が癒されます。
遊歩道に咲いているイワツツジ 小さな滝がなられ込み、橋が架かっている 途中に設けられた巨木の根元にあるベンチ イチイ樫、上を見上げると樹幹が覆っている

 また、この付近の自然林はダニ・山ヒル・マムシなども沢山生息しています、遊歩道から森の奥にはいることはお勧めできません。ダニはススキやシダなどの葉に付いています。山ヒルは梅雨時期などしめった枯れ葉の中に生息しています。マムシは秋口は特に注意が必要です。


営業時間(年中無休)

1〜3月、10〜12月/8:20〜17:00
4〜9月/8:20〜17:40

入場料 300円(駐車料は無料)

アクセス

宮崎から須木に抜ける県道26号線(通称宮崎須木線)
綾町役場前から約10km(車で15分から20分)
この路線は崖崩れなどが多いため、予め道路規制情報をチェックした方がいいでしょう。
 宮崎県道路規制情報はこちら

お問い合わせ先

照葉大吊橋料金所
〒880-1303
宮崎県東諸県郡綾町大字南俣5698
TEL/0985-77-2055


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